新年特別号
2023年1月
令和5年1月
  276号

発行人 土井章弘
編集人 松井三平

      日中平和友好条約締結45周年
           過去を直視し未来志向で
 2023年 新年ご挨拶
 民間交流の発展を願い前進
                              岡山市日中友好協会会長  土 井 章 弘

  岡山市日中友好協会の会員の皆様、日中友好に心を寄せて下さっている皆様に新春のお慶びを申し上げます。

  さて、癒しの詩人と評された坂村真民は「人々が互いに殺さず争わず互いにいつくしみ、すべて平等に差別せず生きる、これが大宇宙の念願なのだ。母なる星地球が回転しながらそう唱えていう声を聞く耳を持とう。大宇宙の大念願は大和楽である」と書き残しています。

  あらゆることは 話し合いで解決を

  中国は目覚ましい経済発展を遂げ、領土問題など様々な懸案事項が山積していますが、あらゆることを話し合いのうえで、解決していくしか良い方法はないと思います。
  2023年は日中平和友好条約締結45周年。 温故知新の精神で、過去を直視しながら未来に向けて、時代の要請に沿った民間交流活動を活発に展開して参りましよう。

  一昨年から全世界に蔓延した、新型コロナ感染症の猛威のため、中国との人的交流が困難となりました。
  昨年は日中国交正常化50周年の記念すべき年でした。定時総会の記念講演会に、元中国大使で日中友好協会会長の丹羽宇一郎氏から「日本と中国は住所変更ができない関係であり、お互いに助け合って、知識の交流、製造能力の互換をしていくことが何より必要です」とのメッセージを頂きました。

  3月には、中国残留孤児問題に詳しい青木康嘉氏による「近現代史にどう学ぶか~中国残留孤児の背景」の講演会と、中国残留孤児を主題とした日中共同制作映画「再会の奈良」の上映協力をしました。
  4月には、重森貝崙追悼「重森三玲永遠のモダンを庭園に」上映会を開催。貝崙氏は日中文化交流専務理事として活躍され、中国食文化の紹介に努められましたが、昨年永眠されました。
  また、岡山市立操南中学校と洛陽市東昇第二中学との友好交流の締結調印式が行われるなど、日中教育交流も継続して実施されました。
  協会青年部(水密会)が中心となって留学生等と若手会員との交流会も活発に行われました。

  5月には、友好都市洛陽市との40年にわたる地道な交流が評価され、第16回自治体国際交流表彰・総務大臣賞という名誉ある賞を頂きました。
  7月に入り、薛剣大使級総領事と領事館一行が来岡され、岡崎嘉平太記念館の訪問や後楽園での留学生との交流会など精力的に活動されました。12月には、「戸毛敏美先生講演会」がZOOMで開催されました。

  コロナ禍であっても 中国との交流継続

  このように、コロナ禍であっても感染対策をしながら様々な中国との交流を継続して参りました。
  しかし、昨年2月には、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、第三次世界大戦すら危惧される実情になってきています。
  人類の歴史は戦争の歴史であるともいえます。38億年の生物の歴史からみれば、人類の歴史はほんのわずかですが、今世紀が人類の終焉にならないことを祈ります。

 皆さまにとって、今年が良い年となりますように祈念いたします。

ご案内
      2023年度(令和5年度
   総会・講演会・互礼会  
  表記の行事を左記の日程で開催します。万障繰り合わせの上、
ご参加くださいますようご案内申し上げます。

   [日時]2023年2月18日(土曜日)
      ◎定期総会(午前9時半より)
       2022年度事業報告、活動計算書、監査報告他
       2023年度役員改選、事業計画書案、活動予算書案他
      ◎記念講演会(午前10時半より)
       講師 山部 英之 氏(矢掛町教育長)
       テーマ 「論語 再発見」
      ◎新春互礼会(午後0時30分開会)

   [場所]ANAクラウンプラザホテル岡山
        (岡山市北区駅元町、JR岡山駅西口)

   [会費]記念講演会=1000円、新春互礼会=5000円

   謹賀新年 新年ご挨拶      2023年(令和5年) 卯
 国際友好都市・地域と より一層の交流を推進
                            岡山市長  大 森 雅 夫 

 
  岡山市日中友好協会の皆様におかれましては、健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。

  平素から、岡山市の国際友好都市である洛陽市との交流をはじめ、日中両国の民間交流の推進に大きな役割を果たして頂き、心から感謝申し上げます。
  昨年は、日中国交正常化50周年という節目の年でありました。両国において50周年を記念する様々なイベントが行われる中、5月には貴協会が自治体国際交流表彰(総務大臣賞)を受賞するという素晴らしいニュースが飛び込んでまいりました。

  貴協会の長きにわたる民間交流推進への多大なご尽力とご貢献がこのような素晴らしい賞で評価されたことは、岡山市と洛陽市との友好交流に大きな意義をもたらすと共に、両国の友好の機運が一層高まることと嬉しく思っております。

  岡山市と洛陽市が友好都市を締結してから今年で42年目を迎えます。
  昨年7月には河南省で「2022河南−日本の友好都市オンライン交流会」が開催され、岡山市と洛陽市の両副市長が参加し、お互いの都市の魅力や今までの交流、未来への抱負を述べ両市の友情を一層深めました。
  また、8月には中高生によるオンライン国際交流を行い、若い世代の交流を推進してまいりました。
  長期化するコロナ禍や物価高騰等の中、岡山市では、市民の暮らしを守り、地域経済を再生するための支援策を講じてまいりました。

  徐々に街に躍動感が戻ってきておりますが、依然としてコロナ禍や物価高騰等の影響が続いており、引き続き、適切に対応すると共に、国際友好交流都市・地域とのより一層の交流を推進してまいる所存です。

  本年は、飛躍すると言われる「卯」の年。これまで進めてきた、街なかの賑わいづくり、魅力ある地域づくり、公共交通の利便性向上、子育て・教育や健康・福祉の充実、防災対策等の施策をより力強く推し進め、更なる市民生活の向上と都市の持続的な発展に繋げてまいる所存です。
 
  年頭に当たり、皆様方の市政への一層のご支援、ご協力をお願い申し上げますと共にますますのご発展とご活躍を心から祈念申し上げます。

 新時代の要求に合致する 中日関係を切り開こう
               中華人民共和国駐大阪総領事館総領事  薛   剣
 

  新年明けましておめでとうございます。本年も皆様にとって幸せで充実した一年になるようお祈りいたします。

  昨年、中日国交正常化50周年という歴史的節目を契機に、中日双方は首脳会談や祝電の交換などを含む積極的な対話と意思疎通を行い、両国関係の全体的な安定と改善を推進してきました。

  貴会も様々な記念イベントを開催し、また長年のご活躍でめでたく自治体国際交流表彰を受賞し、充実した一年を過ごされたと存じます。土井章弘会長をはじめ会員の皆様に衷心より感謝と敬意を表します。

  今年は中日平和友好条約締結45周年にあたり、同じく記念すべく節目の年です。条約は法律の形で中日共同声明の諸原則を確認し、中日関係の政治的指針と法的ルールを確立し、両国関係史における重要な一里塚となっています。
  われわれはぜひこの節目を契機に、先人の知恵と勇気を学び、積極的に対話と意思疎通を行い、新時代の要求に合致する中日関係を切り開くよう多大な努力を共に払わなければなりません。
  貴会には引き続きこの地域の素晴らしい伝統を継承・発揚し、民間交流の強みや絆を活性化させ、新しい時代の中日関係の発展により積極的な役割を果たして頂くようお願い申し上げます。

  今年はまた中国が二つ目の100周年の奮闘目標を目指して新しい道のりを進むスタートの年です。昨年開催された中国共産党第二十回全国代表大会が示したように、中国は今後も改革開放を続け、中国式現代化を全面的に推進し、自身の発展で世界の平和と発展にプラスのエネルギーを注ぎ、人類運命共同体を構築していきます。
  中国の新たな発展は日本を含む世界各国に新たなチャンスをもたらすことになるでしょう。

  日本側には新時代の中国を前向きに捉え、各分野の交流と協力を深化させ、両国の共同発展と繁栄を図り、世界の平和発展に貢献していくよう期待します。
  結びに、貴会の益々のご発展と皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げ、お祝いの言葉とさせて頂きます。

 中日関係の構築に 洛陽パワーで貢献
                           洛陽市人民政府市長  徐 衣 顕 

 
  2022年は中日国交正常化50周年でした。洛陽市と岡山市は友好協会同士が強い絆により、互いに学び研鑽し合い、友好を伝えるために、両市の友好交流事業を力強く着実に実施してきました。

  天地風霜尽、乾坤気象和(大地の天地の間に風も霜もなく、大地全体が穏やかな光景)。新たな一年の到来に際し、私は洛陽市人民政府と私個人の名義で貴方と岡山市日中友好協会に対し、謹んで心より新春のご祝辞を申し上げます。

  5月には貴協会は、当市友好協会との国際交流の中で創造的で多くの人に支持された業績により、『第16回自治体国際交流表彰(総務大臣賞)』を授与され、中国駐大阪総領事は祝電の中で、両市の「民間外交」を新たなレベルに押し上げたと賞賛しました。
  小さな水の流れもやがて大きな河になる。我が市の東昇第二中学と貴市の操南中学校は互いにサッカーボールを贈り合い、両市友好協会は『中日友好林』プロジェクトのために架け橋となるなど、一つ一つ友好の細やかな部分を伝え、両市友好協会が友好の架け橋を引き受け、更に深く友好を耕し、両市人民の相互理解と平和を願う深い気持ちをもって、共に友好都市交流の交流に美しい絵巻物を描いてきました。

  ここに、私は洛陽市人民政府と700余万の洛陽市人民を代表して貴協会と岡山市政府に対し深甚なる感謝の意を表したいと思います。

  旧歳已展千重錦、新年再進百尺竿(昨年は優れた成績を収めたが、来年は百尺竿頭一歩を進める)。

  2023年は中日平和友好条約締結45周年にあたり、私どもは『歴史を鑑とし、未来に向かう』理念を堅持し、『人類運命共同体』の理念を大いに掲げて、小異を残し大同につくという東方の知恵を発揚し、発展促進の共通認識を凝集し、実質的な協力を進化させ、新時代の要請に即した中日関係の構築に洛陽パワーで貢献して参ります。

  山川異域心手相牽、永結同好共創未来(心と手をつなぎ、永遠に友好を結んで共に未来を作る)。私たちは両市友好協会が『民を以て官を促す』という架け橋の役割をよりよく発揮していくことを期待し、土井章弘会長と貴協会が洛陽に来られて交流するのを熱烈に歓迎いたします。
  その時には、深い友情を語り、交流の成果を拡大し、友好の基礎を固め、両市友好交流に新たな一章を綴りましよう!

  岡山市日中友好協会のご発展と岡山市民の皆様のご健勝とご多幸、そして両市対外友好事業の樹木が生い茂るよう祈念致します!

 各地民間友好往来の 更なる発展を推進しよう
                   上海市人民対外友好協会副会長  景   莹

  2023年新年の到来にあたり上海市人民対外友好協会を代表し、岡山市日中友好協会と友好人士の皆様に新春の祝辞を申し上げます。

  岡山市日中友好協会は長期にわたって、上海と岡山の両市間の民間友好交流促進のために、多くの仕事をしてこられました。
  我が協会と緊密に協力関係を結び、経済、文化、教育、民政、青少年など多くの分野で実務的な交流と協力を実施し、喜ばしい成果を収めてきました。

  この機会をお借りして一貫して中日民間友好交流を深く耕してこられた岡山市日中友好協会と友好人士の皆さまに、崇高な敬意と心からの感謝の意を表します。
  引き続き新型コロナウイルスは中日間の人的往来と交流に比較的大きな影響を及ぼしています。
  しかし、対面交流は困難でしたが、中日双方は互いに励まし合い助け合ってきました。同時に私たち友好協会は積極的に協力し合い、多くの小学校、中学校、高校及び支援学校をカバーして、両市の教師生徒のオンライン交流を実施してきました。
  豊富な内容や多様な交流形式により両市青少年の好奇心と情熱をまき起こし、中日青少年の相互理解を促進しました。

  昨年は中日国交正常化50周年でしたが、2023年には「中日平和友好条約締結45周年」を迎えます。
  中日関係は、正に過去を引き継ぎ未来へつなぐ結節点にあり、改善と発展の重要な契機に直面しています。   私たちはこれを契機として共に努力し、交流と協力を拡大し、上海と岡山及び日本各地の民間友好往来の更なる発展を推進しましよう。
  岡山市日中友好協会が良き伝統を継承し、更に中日関係の改善と発展のために引き続き積極的な役割を果たされることを固く信じています。

  最後になりましたが、岡山市日中友好協会のますますのご発展と上海岡山両市の民間交流が日ごとに活発になっていくことを祈っています。

 
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  2023年 新春メッセージ
  「認定特定非営利活動法人」
           更新の手続が完了
                                       岡山市日中友好協会

  岡山市日中友好協会は、11月2日、岡山市から正式に、認定特定非営利活動法人としての認定更新通知書を交付された。 これで一連の更新手続きは完了、有効期限は令和9年9月25日までとなった。

  更新申請手続にあたっては、過去5年間の証憑類など膨大な資料検査があったが、資料等も整理されており無事審査が通った。
  今後は、改善すべき課題は改善。また、認定法人を有効に生かしていくための方策を実施、協会の組織強化に努めていく事にしている。
  新見市と信陽市溮河区 
         30周年機に交流が再開


   新見市国際交流協会(砂田晃洋会長)は、11月30日、友好都市関係にある河南省信陽市溮河区とZOOMによるオンライン交流を開催した。
  新見市側からは、砂田会長はじめ役員ら7名、溮河区側は吉備国際大学卒業で、かつて溮河区の交流担当だった賈鉄氏を始め6名が参加した。

  会議では今年度中に第2回目の交流会を実施することが決まった。同協会の小田成和事務局長は「次回は小学校同士の交流を行いたい」と抱負を述べていた。
  本年は、両市区が友好縁組締結をして30周年になることから、これを契機に交流を再開した。

  縁組締結には岡山市の田口克己、光代両氏(いずれも故人)が尽力、教育基金の設立や学校建設などおおきな足跡を残している。また、当協会も当初から交流促進に協力しており、今回の交流会には松井三平専務理事も参加した。
   ◎中国大阪総領事館主催◎
                「私と中国」原稿募集
                            槌田、黒住氏等入賞

  日中国交正常化50周年を記念して中国駐大阪総領事館が「私と中国」をテーマに募集していたコンクールの受賞者がこのほど決まった。

  岡山関係の受賞者は、作文部門が槌田一成氏「西双版納から届いたエアメール」(二等賞)と黒住昭子氏「私と中国の出会い〜父の餃子〜」(三等賞)、絵画部門では、論語を学ぶ就実小学校児童4人の書が奨励賞を受賞した。
  槌田氏は当協会が1987年に洛陽大学に派遣した元留学生。約1年間の語学留学の後に出会った青年との交流をつづっている。入賞作品は「先憂後楽」の次にに掲載。
 
活動日誌
 9/29… 大阪総領事館オンライン会議
 9/30… 認定更新実地調査(協会事務局)
10/ 5… 真備中学校・矢掛町立三谷小学校訪問
10/21…洛陽市人民対外友好協会新任会長とのオンライン交流会(岡山旭東病院)
10/28…佐藤弘一弁護士来局(協会)
11/ 1… 県立林野高校と上海奉賢区致遠高校とのオンライン交流会(林野高校)
11/ 8… 県立東備支援学校と上海奉賢区恵敏学校とのオンライン交流会(東備支援学校)
11/10…中国茶会(協会)
11/16…天津市との医療交流オンライン会議(岡山旭東病院)
11/24…編集会議(協会)
11/26…青年部「水密会」日中バドミントン大会(北ふれあいセンター)
11/30…新見市と信陽市溮河区とのオンライン交流会(新見市)
12/ 1… 中国人民対外友好協会主催友好都市交流会(ZOOM)
12/ 3… 戸毛敏美先生講演会(県立図書館)
12/ 5… 大阪総領事館主催会議(ホテルニューオオタニ)
12/ 7… 総会準備委員会(協会)
12/ 8… 新見市国際交流協会砂田会長来局(協会)
12/ 8… 中国茶会(協会)
12/13…教育交流協議会「悠久」発送 1
12/15… 倉敷中央病院訪問(倉敷市)
12/15…矢掛町教育委員会山部英之教育長来局(協会)
12/28…会報正月号発送(協会)

会員消息
【入会者】  市岡  幸さん(岡山市)
 先憂後楽
 本年は日中平和友好条約締結45周年。国交正常化から6年経過してやっと実現した。婚約して結納を交わしてから6年たって結婚したということになるだろうか。第2条の覇権条項を巡って論争があったと聞くが、両国の指導者の締結に対する固い思いがあってこそ実現できた。

  レベルは違うが、この感覚は岡山市と洛陽市が友好都市縁組を凍結した時、凍結解除に向けた交渉団の思いと重なる。何としても解除しようという両市の強い思いが実った。

  安保法制の転換に向けた議論が始まっている。強い危惧を覚えるが、二度と戦争をしないと誓った決意と、こ れからも平和共存の社会を築いていくという思いがあれば、必ず戦争は回避できると信じている。

  『重温友好初心』という言葉が最近よく使われている。日中共同声明の前文に明記された「日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えた責任を痛感し、深く反省する」という文面を今一度読み返し、初心を忘れず、日中平和友好のために、その一助となるために、岡山の地で友好活動を展開していきたい。

  ところでこの温という字は論語の『温故知新』にある。たずねてという訳とあたためてという訳がある。個人的にはあたためてが、すんなりする。2500年以上前に中国山東省曲阜で生まれた孔子の名言が現在もなお日本のみならずアジア各国に生き続けている。日中平和友好条約45周年の本年、論語を学習して友好活動の矜持を保っていきたい。(松)

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中国駐大阪総領事館主催国交正常化50周年
記念コンクール作文部門2等賞受賞作

 「西双版納から届いたエアメール」
                       当協会87年派遣洛陽大学3期生 槌田 一成

 
  世の中にデジタルカメラ、更には携帯電話という利器が登場して以来、写真を撮る機会は格段に増えた。
  今思えばその昔、フィルムカメラの時代には現像やプリント代金も気になり、シャッターを押すという行為にもそれなりの気合が込められていた様に感じる。

  1987年4月から翌年3月までの1年間、河南省洛陽市に語学留学した。当時の中国ではカメラを所有していない方も多かった。
  それ故、観光地や景勝地に行くと出張写真屋さんが店を構え記念写真を撮ってくれる商売が繁盛していた。カメラが1台有ればすぐに開業できるのも魅力だったのだろう。若い「経営者」も多かった。
  留学が決まり日本を発つ折、父は愛用のカメラを持たせてくれた。当時でも既に相当年季の入った物だった。そのファインダーを覗きながら一枚、また一枚と写した写真は自室の押入れの中で眠っている。

  出会った方を撮影した際にはその住所を聞いて後日郵送した。それが縁で帰国後も文通の続いた方もいた。しかしその線もいつの日か途絶えてしまった。インターネットなど普及する以前、離れた人と人の心を繋ぐ術が文通のみに限られていたあの頃故、仕方のないことだ。
  しかし私の送った写真が曽遊の地で今を生きる人々のアルバムに収まっているかもしれない。そう思えば嬉しい気持ちになる。

  私も思い出が恋しくなるとアルバムを取り出し暫し時空を超えた旅を楽しんでいる。そしてそれらの写真に写る風景や日付、まだ幼ささえ残る自身の顔を見る度に歳月の流れる速さに驚かされる。気付けばあれからもう35年が経ってしまったのだ。

  カリキュラムを終えてビザが満了するまで一か月半程の期間を使って雲南省を旅した。最後の訪問地となったのは西双版納。省都の昆明からバスに乗り途中の町で2泊を要する行程だったと記憶している。
  旅の夜を過ごした町の名前を記録しなかったことは悔やまれるが、乗客の方々と一緒に過ごした時間は何とも楽しいものであった。
  いよいよ西双版納に到着。熱帯ならではの植物や果物と眩しい太陽、民族衣装を纏った少数民族の人々の姿を目にし、ここも中国か!と驚きながら約1週間を過ごした。
  美しい寺院や美味しい料理もさることながら最も深く思い出に残ったのは、ひとりの青年との出会いだったと言える。

  昆明に戻る前夜。南国ならではの空気に名残惜しさを感じながら、街を散歩していた。ロータリー交差点近くにあった公園のベンチに座って時間を過ごしていた時、その青年が声をかけてきたのだ。「写真を撮らないか?」例の出張写真業者だ。いつもは旅先で声をかけられても断っていたが、その時は何故か撮ってもらうのも悪くないと思えた。

  自由な旅の最終章を迎えつつある自身の姿を現地に生まれ育った青年のカメラで撮影してもらうという行為自体に魅力を感じたのだろう。そして私を見て中国人だと思ってくれたことも嬉しかった。
  そこで自分が外国人であること。そしてこれから昆明に戻り香港経由で日本に帰国することを伝えた。勿論、エアメールでの送付をお願いする故、国内郵便との差額は負担するつもりであることも合わせて伝え彼の反応を待った。
曽遊の地の青年から送られてきた写真。大事な贈り物
 
  暫く思案した後、承諾してくれた。彼にとっては初めての外国人客。そして初めて送るエアメールとのこと。しかし私はその時、彼の風体も含め日本まで届かなくても仕方ないとも思っていた。或る種の賭けを楽しむ心境に似てたとも言えようか。撮影後、彼は私の傍に座り込んだ。そしてふたりで暫くおしゃべりをした。将来の夢、交際している女性のことなど。国や民族は違っても若者同士が交わす会話の内容など大差あるものではない。やがて夜も更けた。写真代を含めてもおそらく300円程度だったであろう代金を渡し公園を離れ投宿していた招待所に戻った。

  それから約1週間後、日本での生活が始まっていた。訪中経験の無い家族や友人からの質問攻めの日々が暫く続いた。母校へ復学の手続きを済ませ新しい学期の授業にも慣れてきた頃、1通のエアメールを受け取った。
  それまでにも恩師や中国の学生達から何通かの封書が届いていた。今日は誰からの郵便だろう?と思いながら薄茶色の封書を見て驚いた。送り主はあの出張写真屋の青年だったのだ。
  早速開封してみると、小さな噴水の横に立つ私の写真。そして便せんに書かれたメッセージも添えられていた。無事届いた嬉しさもさることながら些かでも青年のことを疑った自分の小ささを恥じた。

  その後も多くの国を訪ねる機会を得た。沢山の写真がアルバムに収まっているが、雲南省の最南端、西双版納から届いた1枚は私にとって特別な存在となっている。その写真は青春時代の一時期を過ごした中国という国が私に届けてくれた贈り物の様にも思えるのだ。
  35年前。当時まだ20歳の学生だった私が写真の中では色あせることなく少し首を傾けてポーズをとっている。



「岡山と中国」ご希望の方にはご郵送いたします。  
また、ご入会いただくと、毎月お手元へお届けいたします。入会案内をご覧ください。


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