岡山県日中教育交流協議会会報「悠久」21号 2006年12月号
中国語学習を生かした国際理解・環境学習、学校間交流の試み
――中国・洛陽ホームステイ、緑化ボランティア体験学習―――
・・・・・・・・・・・・・・岡山商科大学附属高等学校 副校長 三田康成
はじめに

本校は、平成13年度より中国語を導入するとともに中国・洛陽市と教育交流協定により、留学生を受け入れる等交流を続けている。そこで中国語を選択している生徒を対象として上海、洛陽を訪問し、洛陽市高校生宅でのホームステイ体験、洛陽市小浪底砂漠緑化基地でのボランティア体験学習、上海見学を計画した。

このプログラムでは、次の3点を目的とした。

1.洛陽市高校生との交流
  @黄土高原、黄河流域の小浪底中学校生徒との緑化作業を通しての交流
  A洛陽外国語学校で日本語を学ぶ生徒宅でのホームステイ交流
2.地球環境問題での砂漠化の学習と緑化ボランティア体験と現地研修
3.古都洛陽見学と発展する中国の経済的中心都市、上海見学

また、事前学習・事後学習も含め参加生徒の以後の中国理解や中国語学習へのさらなる動機づけ(1、2年次生は3年次のドリカムゼミ〔課題研究〕の課題設定等)や継続的なボランティア活動、学校間交流の可能性も意図した。

とりくみの経過

この体験学習は次のような日程で、生徒7名(3年次生1名、2年次生1名、1年次生5名)、引率教員2名(内1名は中国語担当者)で実施した。他の希望生徒5名は日程上参加できなかった。

(1)事前学習
1.中国、中国文化及び洛陽市理解
  @「洛陽の生活」〜洛陽市からの留学生より聞き取り…1.5時間
  A「中国」「洛陽市」…1.5時間
  B「中国の歴史」「日中関係史」…2時間
2.中国語会話
  @日常会話、自己紹介…4時間
   *中国語、中国文化研究については、それぞれ「中国語基礎」「中国語T」「中国語U」の通常授業で実施した(4月〜7月)。
3.砂漠化と緑化活動
  @「地球環境問題と砂漠化」「様々な緑化活動について」…2時間
  A「岡山市日中友好協会の洛陽市・小浪底緑化事業のとりくみ」講師 國忠征美氏(樹木医) 8月8日13:00〜14:30

國忠氏からは、日本の様々な団体が中国で緑化活動を行っていること、岡山市日中友好協会が洛陽市で行っている緑化活動の内容、洛陽市小浪底の気候・土壌・地形、砂漠化や黄砂の原因等について資料をもとに講義していただき、生徒と共に私たちのボランティア活動の内容を検討していただいた。
その結果、8月の植樹は無理であるため、4月に植樹された経済林の草取り、水遣り作業を小浪底中学校の生徒と共に行うことにし、また緑化基地の防砂林や國忠氏の発案で接木された岡山の桃等の経済林や崖下に見える黄河と小浪底ダムの現地見学を行うことにした。

(2)事後学習
  @滞在中の日誌及びレポート提出(9月初め)
  A礼状(Eメール含む)の送付(小浪底中学校、洛陽外国語学校ホストファミリー宅)
   *上記が完了の後、修了証を発行、卒業時に増加単位として1単位を与える。
  B文化祭(10月7日)「いきいきセミナー」での発表及び展示

とりくみの成果

小浪底中学校では、町をあげての歓迎であった。歓迎式には町長、党書記、町民、校長・教職員・生徒約100名の参加があり、この日のために練習したという生徒たちの舞踊を披露してくださった。本校生徒は圧倒されつつも中国語での自己紹介では、発音の良さに感嘆の声があがるほどの生徒もおり、自信をつけた。

黄河と小浪底ダムの壮大な景色を見下ろす緑化基地での共同作業(本校生徒と小浪底中学校生徒の2人1組)は、4月に植林された赤梨の草取り等を小浪底中学校の先生や生徒たちの素朴さに触れながら、生き生きと取り組むことができた。本校生徒の作業に取り組む意欲は予想以上であった。現地研修は、緑化基地の防災林・経済林、基地内の岡山市日中友好協会の植林地、(桃園)尾曜日灌漑設備(ダムから水をくみ上げるポンプ)、ダムについて小浪底中学校長や当地の管理委託者からの説明を受けたが、事前に地理、気候、土壌等の知識があったため、過伐採、黄河への土壌流出、黄砂の発生等についてよく理解ができた。また國忠氏が話されていたように経済林(桃・赤梨・杏・栗等)や商品作物(落花生)が見てとれ、現地の人々に目的意識を持たせる指導が実感できた。生徒たちの「砂漠化」「緑化活動」への理解がよりすすんだと思う。

その後のホームステイ(1軒に2人1組、3年次生のみ1人)では、中国の人々の実生活を体験することができ、自分たちの生活との違いを実感し、有意義であった。

また、洛陽から上海間を列車で移動したことにより、中国内陸部と沿岸部、農村と都市の様子を間近に見て比較することができ、中国への理解もすすんだ。

帰国後は生徒の学習意欲は一層高まり、9月中旬の前期末考査の中国語試験は何れも高得点であり、うち2名は10月末にあった中豪語スピーチコンテストに出場した。

3年次生は今回の体験を大学受験に生かすことができた。1・2年次生は次回への参加も意欲的であり、継続的な緑化ボランティア、学校間の交流の可能性を示すものとなった。

おわりに

国際理解、中国語学習をより深めるためには、中国の学校との継続的な交流は欠かせない。平成19年度は洛陽・上海への修学旅行を計画している。洛陽での緑化ボランティアは、修学旅行での交流でも十分有意性があると思われる。緑化ボランティアは当初本校で育てた苗木を持参し、植林することで洛陽への渡航をより動機付けしようと計画したが、時季的な要因で断念せざるを得なかったため、時季によりボランティアの内容を生徒と共に考える必要がある。

また、ホームステイ体験では、外国語学校の生徒は主に日本語学習が5年目の3年生で、本校生徒は1年生がほとんどということで、日本語での会話が中心となり、家族との意思疎通には不自由がなかったが、中国語会話の学習という点では少し物足りなかった。今後、短期・長期のホームステイ交流等を計画する上で、この点も配慮したい。
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